子どものためのおはなし
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むかし話の残酷さについて

3/7/2011

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むかし話では、洋の東西を問わず、実にあっさりと人が死にます。いえ、人間というのはけっこうあっさりと死ぬものですよ。ただ、日常、私たちはできるだけ忌まわしい死を遠ざけておきたいと思います。だから、人が死ぬ描写が出てくると、「残酷だ」といってこれを避けようとするのでしょう。
むかし話では、そんな綺麗事は通用しません。人は、その本質に違わず、あっさりと死んでいきます。ただ、死にまつわるむごたらしい描写は、同時に省かれます。死のむごたらしさは、禁忌につながります。禁忌をしない代わりに、むごたらしさにはあえて触れません。そうすることでバランスをとるのでしょう。
そういう本質がある以上、むかし話の登場人物を殺さないように結末を変えたり、最後に仲直りさせるような改変は、本来あるべきものを歪めることだとされます。それはよくわかるのです。
けれど、やっぱり私は息子に「おはなし」を語り聞かせていた頃、簡単に死を扱うことができませんでした。たとえ悪玉であっても、「死んでしまいました」は、軽々しく口にしたくなかったのです。だから、桃太郎はいつも桃太郎が鬼ヶ島についたところで「そして桃太郎は鬼を退治して帰りました」と唐突に終わりますし、白雪姫では継母の運命は語られません。ここに書いたおはなしでも、あまり死に直接触れていないのは、やっぱりそういうのが苦手だからです。
ここは、「べきだ」論ではどうしようもありません。「むかし話では人が死ぬものだ」「おかしな改変はすべきではない」と理屈では思っても、そこは語り手である私の限界です。そこを無理に曲げてまで書いてもしかたないだろうと思うわけです。
おはなしは、時代の影響を受けないわけに生きません。正統派の民話、昔話が必要であれば、そういう文献や研究が既に立派に積み上がっています。ここでは、あくまで21世紀初頭のネット時代にあって使いやすいおはなしのネタを提供することに、自分の及ぶ範囲内で集中していこうと思います。
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