現代的なイメージでは河童は愛らしいいたずら者ですが、この「河童の手紙」では、人を食ってしまうおどろおどろしい妖怪として描かれています。そうなんですよね。河童は、夏に子どもが川で泳いでいるときに水底深く引きこんで殺してしまうということで有名な、相当な悪役です。愛嬌のあるイメージは、比較的近年のものなんでしょう。
このおはなしは、最後に「宝」を授かった旅人がどうなるのか、その結末まで語られるのがふつうです。多くのパターンではハッピーエンドですね。けれど、ここではそこをぼかしています。これは、物語全体のおどろおどろしい雰囲気をつないでいくためです。必ずしもハッピーでないエンディングを想像していただけたら、この企みは成功したと言えるのですけれど。