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「悪魔はジョージアへ」について

5/18/2015

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June 15, 2009投稿の再掲

「悪魔はジョージアへ」は、1979年にアメリカのカントリー・ロック界のチャーリー・ダニエルズ・バンドが放ったヒット曲の題名です。このおはなしは、ほとんど直接この曲から書き起こしています。ですからオリジナルとも言えないのですが、さらにさかのぼれば「悪魔との賭け」は世界各地の民話に頻出するモチーフ。チャーリー・ダニエルズ自身も「ふと思いついたまま書いたんだけど、ひょっとしたら子どものころに読んだ教科書の話だったかもしれない」と言っているそうです。出典がわからないほど普遍化したアメリカ民話で、桃太郎やわらしべ長者みたいなものかもしれません。だから、まあ、ここで使うのも問題はないでしょう。

チャーリー・ダニエルズの歌では、悪魔とジョニーの勝負が語られるだけです。木こりや鉄砲打ちは、民話によく見られる「三度の繰り返し」のパターンを踏襲するために付け加えました。また歌の中ではなぜジョニーが勝ったのか詳しい説明はありません。ジョニーが弾きはじめると、朝の情景を歌った歌詞が流れます。日本の民話でも一番鶏で鬼が逃げ出すシーンがよく見られますが、朝日の力で悪魔が負けたとも受け取れます。けれど、その割には悪魔は「うなだれて金のフィドルを差し出した」とあるように、決して一気に退散したわけではありません。

曲を味わいながら聞いていると、どうやら悪魔の腕前とジョニーの腕前に大差はなさそうです。むしろ悪魔の方が「魔物のバンド」の加勢を受けている分だけ凄みのある演奏を見せています。ではどこが違うのかといえば、悪魔のバンドは聴く人に恐怖感を与えるのですが、ジョニーの演奏は喜びを与えます。つまり、そういうことなのです。腕前ではなく、音楽の世界で悪魔はジョニーにかなわなかったわけです。

このあたりを整理して理屈に合わせるため、「悪魔は相手に合わせて強くなる。なぜなら悪魔の腕前は相手のコピーだからだ」という仕組みを考えました。そして、悪魔の音楽によってジョニーが目覚めるという構造にしました。悪魔は実際の朝日で退散したのではなく、ジョニーのフィドロが描き出す朝日にかなわなかったということです。

つまり、悪魔は競争のジャンルを間違えてしまったわけです。音楽は、人の心に感動を呼び起こし、その人を変えてしまいます。たとえ悪魔が弾いた曲でも、それがジョニーを回心させる力がありました。だから、悪魔は自ら墓穴を掘ってしまったのです。

最終的な理屈は、「人間は悪魔に勝てない。しかし、悪魔は神様には勝てない」ということにしました。自力で悪魔と勝負しようとすれば、悪魔に魂を奪われてしまいます。悪魔と勝負するのではなく、ひたすら神にすがることでのみ、人間は悪魔に勝てるわけです。こういう思想は、おそらく多くの宗教に共通するのではないでしょうか。

私は特に神信心をしているわけではありませんが、「人間、謙虚でなければいかん」という発想には共感を覚えます。そこで、アメリカ民話にふさわしくキリスト教の神さまに登場願ったわけです。この程度のことは、まあ慈悲深い神様、許してくださるでしょう。

息子のまことは、「ジョージア」とか「ジョニー」といった固有名詞に引っかかってしまったようです。外国系の話をするときの課題かもしれませんね。
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