むかしむかし、カエルに恋をしたヘビがおりました。どういうわけだか、心のそこからすきになってしまったのです。ヘビは、いつもカエルのそばまでいって、うっとりとカエルの顔をながめるのでした。
もちろん、カエルはうれしいはずはありません。なにせヘビというものは、カエルを食べるのです。できればにげだしたいと思います。けれど、からだがすくんでしまって、うごくことができません。
カエルがうごけないのをいいことに、ヘビはいつもカエルのそばでくつろぎます。カエルはほとんど生きたここちもしませんでした。
ある日、カエルは思い切って言ってみました。
「私のことをすきだなんて、ウソでしょう」
「そんなことないよ。ほんとうに、心のそこからすきなんだよ」と、ヘビはしょうじきに言いました。
「その『すき』っていうのは、『食べたい』っていうことなんじゃないの」
「いや、とんでもない。ぼくはほかの生きものは食べるかもしれないけどね、きみだけは食べないよ。たとえぼくがうえ死にしたってね」。ヘビはしんけんに言います。
「しんじられない」と、カエルは言いました。
「どうしてもしんじられないの」と、ヘビはかなしそうに聞きます。
「だって、あなたはヘビなんですもの。ヘビはカエルを食べるものなのよ」
「それはごかいだよ」とヘビは言いました。
「ごかいじゃないの。だって、私はヘビがカエルを食べるところをなんども見てきているもの」
「いや、そうじゃなくて」。ヘビはちょっとざんねんそうに言いました。「そういうごかいじゃなくてね」
「どういうことなの」
「ぼくはね、ほんとうは……」。そう言いながら、ヘビはかわをぬぎはじめました。ヘビがかわをすっかりぬいでしまうと、そこには小さなカエルがいました。
「ね。きみはぼくのことをしらないんだよ。ぼくがヘビだってごかいしていた。ぼくはきみとおんなじ、カエルなんだよ」
けれど、カエルはゆっくりとあたまをふりました。
「ごかいしているのは、あなたのほうよ」
「どういうこと?」
「あなたは、ほんとうの私をしらないのよ」
そう言うと、カエルはかわをぬぎはじめました。カエルがかわをぬいでしまうと、そこにはあざやかなはねのちょうちょがいました。
「ね。あなたは私のことをしらない。そして、あなたは私を食べるんだわ」
ちょうはかなしそうに言って、飛んでいきましたとさ。
もちろん、カエルはうれしいはずはありません。なにせヘビというものは、カエルを食べるのです。できればにげだしたいと思います。けれど、からだがすくんでしまって、うごくことができません。
カエルがうごけないのをいいことに、ヘビはいつもカエルのそばでくつろぎます。カエルはほとんど生きたここちもしませんでした。
ある日、カエルは思い切って言ってみました。
「私のことをすきだなんて、ウソでしょう」
「そんなことないよ。ほんとうに、心のそこからすきなんだよ」と、ヘビはしょうじきに言いました。
「その『すき』っていうのは、『食べたい』っていうことなんじゃないの」
「いや、とんでもない。ぼくはほかの生きものは食べるかもしれないけどね、きみだけは食べないよ。たとえぼくがうえ死にしたってね」。ヘビはしんけんに言います。
「しんじられない」と、カエルは言いました。
「どうしてもしんじられないの」と、ヘビはかなしそうに聞きます。
「だって、あなたはヘビなんですもの。ヘビはカエルを食べるものなのよ」
「それはごかいだよ」とヘビは言いました。
「ごかいじゃないの。だって、私はヘビがカエルを食べるところをなんども見てきているもの」
「いや、そうじゃなくて」。ヘビはちょっとざんねんそうに言いました。「そういうごかいじゃなくてね」
「どういうことなの」
「ぼくはね、ほんとうは……」。そう言いながら、ヘビはかわをぬぎはじめました。ヘビがかわをすっかりぬいでしまうと、そこには小さなカエルがいました。
「ね。きみはぼくのことをしらないんだよ。ぼくがヘビだってごかいしていた。ぼくはきみとおんなじ、カエルなんだよ」
けれど、カエルはゆっくりとあたまをふりました。
「ごかいしているのは、あなたのほうよ」
「どういうこと?」
「あなたは、ほんとうの私をしらないのよ」
そう言うと、カエルはかわをぬぎはじめました。カエルがかわをぬいでしまうと、そこにはあざやかなはねのちょうちょがいました。
「ね。あなたは私のことをしらない。そして、あなたは私を食べるんだわ」
ちょうはかなしそうに言って、飛んでいきましたとさ。
(初出:May 01, 2009)