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カエルとヘビ

5/18/2015

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むかしむかし、カエルに恋をしたヘビがおりました。どういうわけだか、心のそこからすきになってしまったのです。ヘビは、いつもカエルのそばまでいって、うっとりとカエルの顔をながめるのでした。
もちろん、カエルはうれしいはずはありません。なにせヘビというものは、カエルを食べるのです。できればにげだしたいと思います。けれど、からだがすくんでしまって、うごくことができません。
カエルがうごけないのをいいことに、ヘビはいつもカエルのそばでくつろぎます。カエルはほとんど生きたここちもしませんでした。

ある日、カエルは思い切って言ってみました。
「私のことをすきだなんて、ウソでしょう」
「そんなことないよ。ほんとうに、心のそこからすきなんだよ」と、ヘビはしょうじきに言いました。
「その『すき』っていうのは、『食べたい』っていうことなんじゃないの」
「いや、とんでもない。ぼくはほかの生きものは食べるかもしれないけどね、きみだけは食べないよ。たとえぼくがうえ死にしたってね」。ヘビはしんけんに言います。
「しんじられない」と、カエルは言いました。
「どうしてもしんじられないの」と、ヘビはかなしそうに聞きます。
「だって、あなたはヘビなんですもの。ヘビはカエルを食べるものなのよ」
「それはごかいだよ」とヘビは言いました。
「ごかいじゃないの。だって、私はヘビがカエルを食べるところをなんども見てきているもの」
「いや、そうじゃなくて」。ヘビはちょっとざんねんそうに言いました。「そういうごかいじゃなくてね」
「どういうことなの」
「ぼくはね、ほんとうは……」。そう言いながら、ヘビはかわをぬぎはじめました。ヘビがかわをすっかりぬいでしまうと、そこには小さなカエルがいました。
「ね。きみはぼくのことをしらないんだよ。ぼくがヘビだってごかいしていた。ぼくはきみとおんなじ、カエルなんだよ」

けれど、カエルはゆっくりとあたまをふりました。
「ごかいしているのは、あなたのほうよ」
「どういうこと?」
「あなたは、ほんとうの私をしらないのよ」
そう言うと、カエルはかわをぬぎはじめました。カエルがかわをぬいでしまうと、そこにはあざやかなはねのちょうちょがいました。

「ね。あなたは私のことをしらない。そして、あなたは私を食べるんだわ」
ちょうはかなしそうに言って、飛んでいきましたとさ。
(初出:May 01, 2009)
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    作者について

    私の家は保育園のすぐ近く、そして薪ストーブがあります。そこで、冬季限定のお楽しみとして、薪ストーブの火を囲んでのおはなし会に年長児さんを招待することになりました。そのおはなし会で使ったネタを、ここで紹介していきます。

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