子どものためのおはなし
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にづくしのお話

5/18/2015

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むかしむかし、一匹のかにがおりました。かには、うまれたくにを出て、なにか知らないものをみに行きたいと思いました。そして、旅に出て、あるたににつきました。ところがこのたにには、おにがすんでいて、このかにをあっというまにくいころしてしまいました。
このかにには、一匹のあにがおりました。あには、おとうとがころされたことを聞いて、かたきうちに出かけました。ところが、せっかくおににめぐりあったのに、おには、「しにたくなければさっさといに」と、だにのように笑うのです。あにはゆうかんにおににとびかかりましたが、おにはやにだらけのくちで、うにでもたべるように、あにをぶにっとたべてしまいました。
このことを聞いたかにの友だちのわには、おにのすむたににでかけると、おにのうでをぐにっとかみきって、かたきうちをしたということです。
(初出:May 23, 2009)
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カエルとヘビ

5/18/2015

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むかしむかし、カエルに恋をしたヘビがおりました。どういうわけだか、心のそこからすきになってしまったのです。ヘビは、いつもカエルのそばまでいって、うっとりとカエルの顔をながめるのでした。
もちろん、カエルはうれしいはずはありません。なにせヘビというものは、カエルを食べるのです。できればにげだしたいと思います。けれど、からだがすくんでしまって、うごくことができません。
カエルがうごけないのをいいことに、ヘビはいつもカエルのそばでくつろぎます。カエルはほとんど生きたここちもしませんでした。

ある日、カエルは思い切って言ってみました。
「私のことをすきだなんて、ウソでしょう」
「そんなことないよ。ほんとうに、心のそこからすきなんだよ」と、ヘビはしょうじきに言いました。
「その『すき』っていうのは、『食べたい』っていうことなんじゃないの」
「いや、とんでもない。ぼくはほかの生きものは食べるかもしれないけどね、きみだけは食べないよ。たとえぼくがうえ死にしたってね」。ヘビはしんけんに言います。
「しんじられない」と、カエルは言いました。
「どうしてもしんじられないの」と、ヘビはかなしそうに聞きます。
「だって、あなたはヘビなんですもの。ヘビはカエルを食べるものなのよ」
「それはごかいだよ」とヘビは言いました。
「ごかいじゃないの。だって、私はヘビがカエルを食べるところをなんども見てきているもの」
「いや、そうじゃなくて」。ヘビはちょっとざんねんそうに言いました。「そういうごかいじゃなくてね」
「どういうことなの」
「ぼくはね、ほんとうは……」。そう言いながら、ヘビはかわをぬぎはじめました。ヘビがかわをすっかりぬいでしまうと、そこには小さなカエルがいました。
「ね。きみはぼくのことをしらないんだよ。ぼくがヘビだってごかいしていた。ぼくはきみとおんなじ、カエルなんだよ」

けれど、カエルはゆっくりとあたまをふりました。
「ごかいしているのは、あなたのほうよ」
「どういうこと?」
「あなたは、ほんとうの私をしらないのよ」
そう言うと、カエルはかわをぬぎはじめました。カエルがかわをぬいでしまうと、そこにはあざやかなはねのちょうちょがいました。

「ね。あなたは私のことをしらない。そして、あなたは私を食べるんだわ」
ちょうはかなしそうに言って、飛んでいきましたとさ。
(初出:May 01, 2009)
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おしまいのお話

5/18/2015

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このお話のはじまりは、ずいぶんむかしむかしのことです。そのころ、おしまいとはじまりは、たいへん仲のよい友だちでした。はじまりがあれば、いつでもおしまいがあります。おしまいがきたら、つぎにかならずはじまりがやってきます。そんなふうに、二人はいつもつれだっていました。
ところがあるとき、はじまりがおしまいにいいました。
「きみとぼくは、いつもいっしょにいるけれど、どっちがえらいと思うかい?」
「ええっと」
おしまいは返事にこまりました。それまで、そんなことを考えたこともなかったからです。
「どっちがえらいのか、わからないや」
「わからないなら考えようよ」
「でも、どうして?」
「だって、二人くらべたら、どっちかがえらいに決まってるじゃない」
「そうかなあ」
「じゃあ聞くけど、ぼうが二本あったら、どっちが長い?」
「そりゃあ、くらべてみればわかるよ」
「だろう。どっちかがかならず長いんだよ。どっちが長いかわからないなんてことはないよね。じゃあ、小石が二つあったら、どっちが重い?」
「そりゃあ、てんびんにのせてみればわかるだろう」
「ね。どっちが重いか、ちゃあんとくらべればわかる。どっちが重いかわからないなんてことはないよね。じゃあ、ひとが二人いたら、どっちがえらい?」
「そりゃあ、くらべてみればわかるだろう」
「だったら、きみとぼくと、どっちがえらい?」
おしまいは、すっかりこまってしまいました。ぼうの長さをくらべるのはかんたんですし、小石の重さだって、てんびんがあればすぐにわかります。けれど、人をくらべるにはどうしたらいいのでしょう。
「じゃあ、こう考えてみようよ」
はじまりはいいました。
「きみとぼくは、どっちがさいしょにくるかい?」
「そりゃあ、きみだろう」
おしまいは答えました。
「じゃあ、ぼくがこなければ、きみもやってくることはできないわけだ」
「そうだよ」
おしまいは、なにをいまさらいうんだと思いました。
「ぼくは、きみがいなくったってどこにでもいける」
「そうだね」
「だけど、きみはぼくがいったところしかいけない」
「そうだね」
「じゃあ、どっちがえらい?」
おしまいはこまってしまいました。そして、しぶしぶ答えました。
「そういうことなら、きみだろうな」
「うん、ぼくもそう思う」
はじまりは、きっぱりといいました。
「だから、きみはぼくのけらいにならなきゃいけないよ」
おしまいは、びっくりしました。
「どうして?」
「だって、ぼくのほうがえらいんだから」

それからというもの、はじまりは、なにかにつけて、おしまいをけらいのようにあつかうようになりました。いままでのようにいっしょに遊びにいっても、まえのようにはおもしろくありません。そこで、おしまいは、だんだんとはじまりといっしょにいるのがいやになってきました。
そんなことがあってから、もうずいぶんとたちました。いまでは、おしまいは、はじまりのそばにはできるだけ近よらないようにしています。ですから、このごろでは、はじまりからおしまいまで、ずいぶんと長い時間がかかるようになったのです。
ですから、このお話も、はじまりからおしまいまで、ずいぶんと長くかかってしまうのです。

おしまい。
(初出:March 21, 2009)
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    作者について

    私の家は保育園のすぐ近く、そして薪ストーブがあります。そこで、冬季限定のお楽しみとして、薪ストーブの火を囲んでのおはなし会に年長児さんを招待することになりました。そのおはなし会で使ったネタを、ここで紹介していきます。

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