むかし、あるところに貧しい漁師がおりました。漁師が貧しいのは生まれつきというわけでもなく、また怠け者だとか漁がへただというわけでもありませんでした。ただ、この漁師はひどく運が悪いのです。漁に出ようと思ったら、いたずら小僧たちに網を破られています。ようやく網をなおしたと思ったら、お天気が悪くなって舟を出せません。ようやくお天気がよくなったと思ったら、風邪をひいてしまっています。風邪がなおるころには、魚の群れはとうにどこかにいってしまっています。運が悪いので、この漁師はほとんど魚をとることができません。だから貧しいのはしかたないのでした。
漁師は、このまま漁師を続けてもろくなことはないと思いました。そこで生まれついて住み慣れた村を捨て、別の場所で新しい暮らしをはじめようと思いました。知らない場所で慣れない暮らしをするのはちょっと不安でしたけれど、ここにいても飢え死にをするだけだし、だったらどこで野垂れ死んでも同じことだと、覚悟を決めたのです。
そして、この漁師はある朝、自分の小屋を出て山に向かう道をたどっていきました。それまで海辺の村を離れたことのなかった漁師は、見慣れない景色にはじめはとまどいましたが、だんだんとおもしろくなってきました。山の木々も、草花も、流れる水も、吹く風も、なにもかもが珍しいのです。こういうものを自分は今まで知らずにきたのだと思うと、なんだかとても残念に思うほどでした。
やがて漁師は一山越え、二山越えて、三つ目の山道にさしかかりました。朝早くに出たはずなのに、いつの間にかお日様は高くなり、そしてだんだんと傾いてきています。いったいどれほど歩いたのか、漁師にはまるでわかりませんでした。ただわかっているのは、自分がずいぶん長いあいだ何も食べていないこと、そして、何か食べられるようになるまではまだまだ先が遠いことぐらいでした。もちろん、どこまでいけばこのすきっ腹をみたすことができるのか、そういうことがほんとうにできるのかどうか、できないとしたらどこまで行けば飢え死にするのかといったことは、まったくわかりません。ただ、ここにいたのではどうしようもないということがわかっているだけです。先に何が待っているのかはわからないけれど、この山の中で生きていくことができないことははっきりしています。
だから、漁師は急ぐでもなく、かといって休むでもなく、どんどん先を続けました。のんびりできるわけはないけれど、急ぐ理由もないので、珍しい景色をながめながら、ただ足に任せて前へと進みました。
そして三つ目の山の峠にさしかかったとき、とつぜん、目の前の木の上に、大きな生きものが現れました。その生きものは、鳥のようでもあり、獣のようでもあり、虫のようでもあり、また蛇のようでもありました。ふつうなら、こんな生きものを見た人は、それだけで肝をつぶしてしまうでしょう。少しでもものを知った人なら、化け物だとわかるはずです。
けれど、この漁師は山のことは何も知りません。海のことなら隅から隅まで知っていますけれど、山のことは子どもほどにも知りません。だから、こんな化け物を見ても、いっこうにこわがりません。「いやあ、山には珍しい生きものが住んでいるのだなあ」と感心しましたが、それだけのこと。漁師にとって、この化け物は、鳥や虫や獣が珍しいのと同じ程度にしか珍しくなかったのです。
化け物は、枝の上からじっと漁師を見下ろしていましたが、やがて「ポッポコピーのポッポコプーのポッポコナー」と大きな声で鳴きました。
その声があまりにおもしろかったので、漁師は大笑いをしました。いえ、きっと、化け物に恐れをなした人にとっては、その声はきっとこの世のものとも思われない恐ろしい声に聞こえたことでしょう。けれど、最初から怖いなどと思ってもいない漁師ですから、その声は単にばかでかいだけのこっけいな音に聞こえたのです。漁師は腹を抱えて笑いました。
すると、化け物がしゃべりはじめました。
「おまえはおもしろい男だ。いままでおれを見て笑ったやつなどいない。実に珍しい。よろしい。おまえにいいことを教えてやろう」
漁師は、化け物の声に耳を傾けました。やっぱり山にはいろんなものがいるんだなあと、感心しています。人間の言葉をしゃべる生きものがいても、知らないから不思議とも思わないわけです。
「いいことというのは、こういうことだ。この山を下ったところに、大きな村がある。そこにはひとりの長者が住んでいる。その長者にひとり娘があって、長者はむこをとりたいと思っておる。ところが、この娘、この上はないというほどおかしな顔をしておってな。だれひとり、この娘の顔を見て笑わんもんはおらん。しかし、笑われて気持ちのいいものはおらんじゃろう。長者は、娘の顔を見て笑ったものは、むこにはとらんと心に決めておる。いや、それどころか、もしも娘の顔を見て笑わんものがおったら、ぜひむこにとろうと、そう決めておるが、そのことを知っているものはだれもおらん。だから、娘にはむこがくるあてがない」
そこまで言って、化け物は漁師の顔をまじまじと見ました。
「おまえは不思議を怖れない強い心をもっている。この長者の家を訪ねてみるがいい。きっと運が開けるだろう」
漁師は、この奇妙な生き物の言葉を信じていいものかどうか、ちょっと迷いました。けれど、どのみちどこかに行かなければなりません。そして、どこに行くあてもないのですから、言われたとおりにしたってかまわないわけです。そこで漁師は、そのまま山を下っていきました。
長者の家はすぐにわかりました。たずねるまでもありません。大きな門構えの立派なお屋敷で、塀のまわりに堀までほってあります。橋をわたって案内を乞うと、門番が出てきました。
「旅の者であります。一晩、物置の片隅にでも泊めてもらえんでしょうか」
漁師がそういいますと、門番は頭のてっぺんからつま先までじろりと見て、何も言わずに引っ込みました。しばらくして顔を出すと、「ついてこい」と、先に立って裏口にまわりました。そこから、日陰の粗末な物置に、漁師を案内して、「あとで食べるものをもってこさせよう」と言いました。
長者のお屋敷に来ることは来ましたが、さて、どうすればいいのか、漁師には見当もつきません。粗末な身なりをした自分が、長者さまに会うこと、お姫様に会うことなどできるはずはありません。どうやって運を開けばいいのでしょう。
しばらくすると、女中が握り飯をお盆にのせてやってきました。ずいぶん長いことまともにご飯を食べたことのない漁師でしたから、夢中で食べました。女中はびっくりして、おかわりのおにぎりをもってきましたが、これまたペロリ。その食べっぷりがあんまり見事なもので、女中は思わず大きな声で笑ってしまいました。
女中頭が、その声を聞きつけました。
「いったい何を笑っているのですか、はしたない」
けれど、女中頭も思わず漁師の食べっぷりに見入ってしまいます。ただのおにぎりをこんなにおいしそうに食べる人は、見たことがありません。
ようやく漁師の腹がいっぱいになりました。けれど、女中たちは台所に戻ってもその話でもちきりです。そのうちに、これがお姫さまの耳に入りました。
「そんなにおもしろいなら、私も見てみたい」
そんなことも知らずに食休みをしていた漁師のところに、おめしがかかります。さすがに垢まみれでは失礼ということで、漁師は風呂に入らされます。こざっぱりした着物を与えられ、さて、お姫さまのお座敷に通されます。部屋の真ん中には握り飯を高く積み上げたお盆が用意されていました。これを食べてみろということなのかもしれません。けれど、漁師はもうお腹がいっぱい。食べたい気持ちにはなれません。漁師は顔を上げました。奥の、少し高くなったところに、綺麗な着物を着たお姫さまが座っています。その顔は、いままで見たこともないほど、奇妙なものでした。
漁師は、あの化け物の言葉を思い出しました。お姫さまを見て笑わなければ、この家の婿になれるかもしれません。けれど、見れば見るほど、笑わずにいられないような顔です。ふつう、人の顔は右半分と左半分でそれほどちがわないものです。それが、このお姫さまは、右半分と左半分の顔がまるで別人。しかも、それぞれがてんでんばらばらです。むっつりとした口もとは、泣きそうな目とまるで釣り合っていません。大きな耳と小さな鼻は、なんとも珍しいとりあわせです。見れば笑ってしまうとわかっていても、こんな不思議な顔からは目が離せなくなってしまいます。
漁師は、なんとか笑い出す前に、お姫さまから目をそらすことができました。目を外に移すと、庭が見えます。その庭の松の枝に、あの化け物が止まっているではありませんか。
「ポッポコピーのポッポコプーのポッポコナー」
漁師は思わずつぶやきました。あの化け物と出会ったときに聞いた鳴き声です。化け物の名前を知らないのですから、この忘れられない鳴き声を声に出したのです。
「これ、いまその方、何と言った」
近くにいた女中が、とがめるように漁師に聞きました。漁師は仕方なく、もっと大きな声で言いました。
「ポッポコピーのポッポコプーのポッポコナー」
あまりに場違いなその言葉に、誰もが笑いました。見ると、お姫さまも笑っています。その笑顔を見て、漁師は美しいなと思いました。不思議なことに、あのてんでんばらばらで奇妙な顔が、笑うととてもかわいらしく見えるのです。目鼻立ちのおかしなところは消え、心の素直さが顔に現れたようです。
「実は、私、森の中で、ポッポコピーのポッポコプーのポッポコナーと鳴く鳥に出会いました。鳥と申し上げましたが、これは獣のようでもあり、虫のようでも蛇のようでもありました」そんなふうに、漁師は話しはじめました。お姫さまは、身を乗り出すように、その話を聞きました。
この様子を、隣の部屋から長者さまが見ておられました。そして、おっしゃいました。
「あの旅の男、身なりは卑しいが、姫とたいそう気が合うようじゃな。何よりも、姫のことを笑いものにしなかった。心ばえが優れておるに違いない。ぜひとも婿に迎えたいものじゃ」
そして、その秋にはめでたく婚礼が執り行われました。元は漁師だった花婿は、あの松の木の根方にほこらをつくり、そこにポッポコピーのポッポコプーのポッポコナーを祭ったということです。
漁師は、このまま漁師を続けてもろくなことはないと思いました。そこで生まれついて住み慣れた村を捨て、別の場所で新しい暮らしをはじめようと思いました。知らない場所で慣れない暮らしをするのはちょっと不安でしたけれど、ここにいても飢え死にをするだけだし、だったらどこで野垂れ死んでも同じことだと、覚悟を決めたのです。
そして、この漁師はある朝、自分の小屋を出て山に向かう道をたどっていきました。それまで海辺の村を離れたことのなかった漁師は、見慣れない景色にはじめはとまどいましたが、だんだんとおもしろくなってきました。山の木々も、草花も、流れる水も、吹く風も、なにもかもが珍しいのです。こういうものを自分は今まで知らずにきたのだと思うと、なんだかとても残念に思うほどでした。
やがて漁師は一山越え、二山越えて、三つ目の山道にさしかかりました。朝早くに出たはずなのに、いつの間にかお日様は高くなり、そしてだんだんと傾いてきています。いったいどれほど歩いたのか、漁師にはまるでわかりませんでした。ただわかっているのは、自分がずいぶん長いあいだ何も食べていないこと、そして、何か食べられるようになるまではまだまだ先が遠いことぐらいでした。もちろん、どこまでいけばこのすきっ腹をみたすことができるのか、そういうことがほんとうにできるのかどうか、できないとしたらどこまで行けば飢え死にするのかといったことは、まったくわかりません。ただ、ここにいたのではどうしようもないということがわかっているだけです。先に何が待っているのかはわからないけれど、この山の中で生きていくことができないことははっきりしています。
だから、漁師は急ぐでもなく、かといって休むでもなく、どんどん先を続けました。のんびりできるわけはないけれど、急ぐ理由もないので、珍しい景色をながめながら、ただ足に任せて前へと進みました。
そして三つ目の山の峠にさしかかったとき、とつぜん、目の前の木の上に、大きな生きものが現れました。その生きものは、鳥のようでもあり、獣のようでもあり、虫のようでもあり、また蛇のようでもありました。ふつうなら、こんな生きものを見た人は、それだけで肝をつぶしてしまうでしょう。少しでもものを知った人なら、化け物だとわかるはずです。
けれど、この漁師は山のことは何も知りません。海のことなら隅から隅まで知っていますけれど、山のことは子どもほどにも知りません。だから、こんな化け物を見ても、いっこうにこわがりません。「いやあ、山には珍しい生きものが住んでいるのだなあ」と感心しましたが、それだけのこと。漁師にとって、この化け物は、鳥や虫や獣が珍しいのと同じ程度にしか珍しくなかったのです。
化け物は、枝の上からじっと漁師を見下ろしていましたが、やがて「ポッポコピーのポッポコプーのポッポコナー」と大きな声で鳴きました。
その声があまりにおもしろかったので、漁師は大笑いをしました。いえ、きっと、化け物に恐れをなした人にとっては、その声はきっとこの世のものとも思われない恐ろしい声に聞こえたことでしょう。けれど、最初から怖いなどと思ってもいない漁師ですから、その声は単にばかでかいだけのこっけいな音に聞こえたのです。漁師は腹を抱えて笑いました。
すると、化け物がしゃべりはじめました。
「おまえはおもしろい男だ。いままでおれを見て笑ったやつなどいない。実に珍しい。よろしい。おまえにいいことを教えてやろう」
漁師は、化け物の声に耳を傾けました。やっぱり山にはいろんなものがいるんだなあと、感心しています。人間の言葉をしゃべる生きものがいても、知らないから不思議とも思わないわけです。
「いいことというのは、こういうことだ。この山を下ったところに、大きな村がある。そこにはひとりの長者が住んでいる。その長者にひとり娘があって、長者はむこをとりたいと思っておる。ところが、この娘、この上はないというほどおかしな顔をしておってな。だれひとり、この娘の顔を見て笑わんもんはおらん。しかし、笑われて気持ちのいいものはおらんじゃろう。長者は、娘の顔を見て笑ったものは、むこにはとらんと心に決めておる。いや、それどころか、もしも娘の顔を見て笑わんものがおったら、ぜひむこにとろうと、そう決めておるが、そのことを知っているものはだれもおらん。だから、娘にはむこがくるあてがない」
そこまで言って、化け物は漁師の顔をまじまじと見ました。
「おまえは不思議を怖れない強い心をもっている。この長者の家を訪ねてみるがいい。きっと運が開けるだろう」
漁師は、この奇妙な生き物の言葉を信じていいものかどうか、ちょっと迷いました。けれど、どのみちどこかに行かなければなりません。そして、どこに行くあてもないのですから、言われたとおりにしたってかまわないわけです。そこで漁師は、そのまま山を下っていきました。
長者の家はすぐにわかりました。たずねるまでもありません。大きな門構えの立派なお屋敷で、塀のまわりに堀までほってあります。橋をわたって案内を乞うと、門番が出てきました。
「旅の者であります。一晩、物置の片隅にでも泊めてもらえんでしょうか」
漁師がそういいますと、門番は頭のてっぺんからつま先までじろりと見て、何も言わずに引っ込みました。しばらくして顔を出すと、「ついてこい」と、先に立って裏口にまわりました。そこから、日陰の粗末な物置に、漁師を案内して、「あとで食べるものをもってこさせよう」と言いました。
長者のお屋敷に来ることは来ましたが、さて、どうすればいいのか、漁師には見当もつきません。粗末な身なりをした自分が、長者さまに会うこと、お姫様に会うことなどできるはずはありません。どうやって運を開けばいいのでしょう。
しばらくすると、女中が握り飯をお盆にのせてやってきました。ずいぶん長いことまともにご飯を食べたことのない漁師でしたから、夢中で食べました。女中はびっくりして、おかわりのおにぎりをもってきましたが、これまたペロリ。その食べっぷりがあんまり見事なもので、女中は思わず大きな声で笑ってしまいました。
女中頭が、その声を聞きつけました。
「いったい何を笑っているのですか、はしたない」
けれど、女中頭も思わず漁師の食べっぷりに見入ってしまいます。ただのおにぎりをこんなにおいしそうに食べる人は、見たことがありません。
ようやく漁師の腹がいっぱいになりました。けれど、女中たちは台所に戻ってもその話でもちきりです。そのうちに、これがお姫さまの耳に入りました。
「そんなにおもしろいなら、私も見てみたい」
そんなことも知らずに食休みをしていた漁師のところに、おめしがかかります。さすがに垢まみれでは失礼ということで、漁師は風呂に入らされます。こざっぱりした着物を与えられ、さて、お姫さまのお座敷に通されます。部屋の真ん中には握り飯を高く積み上げたお盆が用意されていました。これを食べてみろということなのかもしれません。けれど、漁師はもうお腹がいっぱい。食べたい気持ちにはなれません。漁師は顔を上げました。奥の、少し高くなったところに、綺麗な着物を着たお姫さまが座っています。その顔は、いままで見たこともないほど、奇妙なものでした。
漁師は、あの化け物の言葉を思い出しました。お姫さまを見て笑わなければ、この家の婿になれるかもしれません。けれど、見れば見るほど、笑わずにいられないような顔です。ふつう、人の顔は右半分と左半分でそれほどちがわないものです。それが、このお姫さまは、右半分と左半分の顔がまるで別人。しかも、それぞれがてんでんばらばらです。むっつりとした口もとは、泣きそうな目とまるで釣り合っていません。大きな耳と小さな鼻は、なんとも珍しいとりあわせです。見れば笑ってしまうとわかっていても、こんな不思議な顔からは目が離せなくなってしまいます。
漁師は、なんとか笑い出す前に、お姫さまから目をそらすことができました。目を外に移すと、庭が見えます。その庭の松の枝に、あの化け物が止まっているではありませんか。
「ポッポコピーのポッポコプーのポッポコナー」
漁師は思わずつぶやきました。あの化け物と出会ったときに聞いた鳴き声です。化け物の名前を知らないのですから、この忘れられない鳴き声を声に出したのです。
「これ、いまその方、何と言った」
近くにいた女中が、とがめるように漁師に聞きました。漁師は仕方なく、もっと大きな声で言いました。
「ポッポコピーのポッポコプーのポッポコナー」
あまりに場違いなその言葉に、誰もが笑いました。見ると、お姫さまも笑っています。その笑顔を見て、漁師は美しいなと思いました。不思議なことに、あのてんでんばらばらで奇妙な顔が、笑うととてもかわいらしく見えるのです。目鼻立ちのおかしなところは消え、心の素直さが顔に現れたようです。
「実は、私、森の中で、ポッポコピーのポッポコプーのポッポコナーと鳴く鳥に出会いました。鳥と申し上げましたが、これは獣のようでもあり、虫のようでも蛇のようでもありました」そんなふうに、漁師は話しはじめました。お姫さまは、身を乗り出すように、その話を聞きました。
この様子を、隣の部屋から長者さまが見ておられました。そして、おっしゃいました。
「あの旅の男、身なりは卑しいが、姫とたいそう気が合うようじゃな。何よりも、姫のことを笑いものにしなかった。心ばえが優れておるに違いない。ぜひとも婿に迎えたいものじゃ」
そして、その秋にはめでたく婚礼が執り行われました。元は漁師だった花婿は、あの松の木の根方にほこらをつくり、そこにポッポコピーのポッポコプーのポッポコナーを祭ったということです。
(初出:May 19, 2009)