ある田舎の豚小屋に、たくさんの豚が飼われていました。ある夜、一匹の猪が小屋のそばで土をほじくり返していました。皆さんはご存じないかもしれませんが、猪と豚は、同じ動物なんですよ。人間に飼い慣らされた猪が豚というわけです。もちろん、長い間にずいぶんと見かけも変わってしまっていますけれど。
さて、小屋の中の一匹の豚が猪に気づいて言いました。
「君、そんなところにいたら危ないぞ。人間に見つかったら、撃ち殺されてしまう」
猪は馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、あいかわらず土をほじくります。
「君のような危ない生き方を、ぼくはわからない。食べ物がなくなれば飢え死にするんだしね。ここは安全だよ。餌は毎日飽きるほど食べさせてもらえる。衛生的で、病気にもならない。薬だってもらえるんだ。逃げ隠れせず、のんびり暮らせるんだよ」
猪は、聞いているのか聞いていないのか、やっぱり土の中を探しています。きっと、食べられる木の根っ子か、それとも土の中の虫けらを探しているのでしょう。
「ぼくはねえ、こっちにいて幸せだよ。そして、大きく強くなったら、トサツジョウってところに行くんだ。そしたらもっとすばらしいことがまっているって話だよ」
猪は、哀れんだように豚を見て言いかけました。
「そのトサツジョウなんだけれど…」
そのとき、小屋の向こうで懐中電灯が光りました。猪は一声小さくうなると、闇の中に駆け込みました。やがて車の音が聞こえ、遠くから銃声がひびきました。豚たちは、息をひそめてそのようすを聞いていましたが、すぐにそんなことも忘れたように餌を食べ始めました。ただ、一匹の子豚が、いつまでも闇の中を見つめていました。
さて、小屋の中の一匹の豚が猪に気づいて言いました。
「君、そんなところにいたら危ないぞ。人間に見つかったら、撃ち殺されてしまう」
猪は馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、あいかわらず土をほじくります。
「君のような危ない生き方を、ぼくはわからない。食べ物がなくなれば飢え死にするんだしね。ここは安全だよ。餌は毎日飽きるほど食べさせてもらえる。衛生的で、病気にもならない。薬だってもらえるんだ。逃げ隠れせず、のんびり暮らせるんだよ」
猪は、聞いているのか聞いていないのか、やっぱり土の中を探しています。きっと、食べられる木の根っ子か、それとも土の中の虫けらを探しているのでしょう。
「ぼくはねえ、こっちにいて幸せだよ。そして、大きく強くなったら、トサツジョウってところに行くんだ。そしたらもっとすばらしいことがまっているって話だよ」
猪は、哀れんだように豚を見て言いかけました。
「そのトサツジョウなんだけれど…」
そのとき、小屋の向こうで懐中電灯が光りました。猪は一声小さくうなると、闇の中に駆け込みました。やがて車の音が聞こえ、遠くから銃声がひびきました。豚たちは、息をひそめてそのようすを聞いていましたが、すぐにそんなことも忘れたように餌を食べ始めました。ただ、一匹の子豚が、いつまでも闇の中を見つめていました。