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「王様とつるぎ」について

5/16/2015

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April 13, 2009投稿の再掲

息子のまことは、よくいえば平和主義者、わるくいえば臆病で、友だちとの喧嘩はもちろん、プロレスごっこのような格闘系の遊びさえほとんどしない子どもです。けれど、この春から小学校に行くようになって、新しいものにどんどん触れるようになり、そこは男の子、「たたかう」シチュエーションを遊びの中にとりいれるようになってきました。どちらかといえば臆病者で、たとえ卑怯と罵られても暴力からは逃げ出してしまう私としては、これも成長と思いながら複雑な心境です。「王様とつるぎ」は、そんな思いの中で浮かんだおはなしです。

舞台は、たぶん、中国内陸部か中東、遊牧民が国境近くに出没するような地域ですが、たぶん該当するような現実の場所はないでしょう。あくまで空想の舞台です。歴史上、平和主義の国、武闘主義の国はいろいろありましたが、おそらく三代続いて完全に武器を放棄した国というのも、またないのではないかと思います(できればそういう国に住みたいと、臆病者の私は思ったりもします)。
書きながら、ああ、このおはなしは、「平和ボケ」と言われる憲法九条をもった現代日本のことを批判した作品だと誤解されるだろうなと感じました。決してそういう意図のもとに創作したものではありません。むしろ、武器の存在そのものが争いを発生させるという単純な事実を訴えたかったのです。ですから、憎むべきは平和の果てに武器の何たるかを忘れてしまった王様とその国の人々ではなく、そこで一儲けしようとビジネスを企んだ商人の方です。ただ、それにうまく乗せられてしまった人々に責がないわけでもありません。このあたり、自分で予想した以上に複雑な話になってしまっています。

商人に、最初から騒乱を引き起こす意図があったとは思えません。有能なビジネスマンは、裸足で暮らす人々を見て靴の一大市場を構想するそうです。この商人は、武器のない国を見て武器の一大市場を構想したのでしょう。武器を売って儲けることが彼のすべてです。ひょっとしたら、本当に、「平和のシンボル」として新たな武器の用途を創造しようとしたのかもしれません。彼自身、平和主義者だったのかもしれないのです。
けれど、人を殺すための道具は、存在するだけで人殺しを引き起こす原因となります。この単純な原理がわかっていない限り、世の中から悲劇はなくならないのだと思うこの頃です。だからまことには、おもちゃであっても鉄砲はもってほしくないし、できれば「たたかう」ような遊びも止めてほしいなあと思うのです。ひょっとしたらそれは愚かな王様をつくるだけなのかもしれないのですけれど。
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