子どものためのおはなし
  • Home
  • 出まかせ 日本むかしばなし
  • おはなし会のおはなし
  • ブログ
  • エッセイ

田んぼに埋めた金

2/19/2011

1 Comment

 
むかし、あるところにお百姓がおった。働き者であったが、病に倒れて、もう長くもなかろうと、自分でもそう思うようになった。そこでこのお百姓、三人の息子を呼んで、こう言い残した。
「おまえらのために、言っておく。金は、田んぼに埋めてある」
そして次の朝には冷たくなっておった。
さて、家を継ぐのは長男である。長男は、父親の言葉を思い出した。そして、刈り入れの済んだ秋の田んぼに行ってみた。けれど、広い田んぼのどこに金を埋めたのか、さっぱりわからない。そこで、端から順々に鋤を使って深く、深く掘り返した。田んぼ一面をすっかり掘り返した。
けれど、どこにも金の埋まっている様子はない。そこで長男は、すっきりとあきらめた。父親は、死に際のうわ言を言ったにちがいないと、金のことはあきらめることにした。そして、金もないような家なんか継いでもしかたないと、家も田んぼも次男に残してどこかへ行ってしまった。
田んぼを残された次男は、父親の言ったことをもう一回とっくりと考えてみた。そして冬の田んぼに出てみた。兄の掘り返した田んぼには、土くれの大きなかたまりがごろごろしている。これではだめだと、次男は考えた。この大きな土のかたまりのどこかに、金が隠れているかもしれないではないか。そこで、鍬をとってきて、土くれを細かく、細かく砕き始めた。一冬かかって、すっかり細かにこなしてしまった。
けれど、どこにも金の埋まっている様子はない。そこで次男も、すっきりとあきらめた。やっぱり親父は、死に際のうわ言を言ったにちがいないと、金のことはあきらめることにした。そして、金のないような家なんか継いでもしかたにと、やっぱりどこかに行くことに決めた。
最後に残された末息子は、春の田んぼにたって親父様の言ったことをとっくり考えた。考えて、考えて、やっぱりわからなかった。
それでも、田んぼは目の前にある。兄たちが起こしてくれた田んぼがある。そこで弟は、田んぼに水を張ってみた。よく耕された水は、少し代をかくだけで、とろとろのいい泥になった。
そして、その秋には、いつもよりもずっと豊かな実りがあった。兄たちが深く耕してくれたおかげであった。
年貢を納め、要る分をのけても、まだまだたくさんの米が残った。そこで弟は、この米を売って、それほど多くはないけれど、いくらかの金を手に入れることができた。
やはり田んぼに金は埋まっていたのだと、弟は親父様に感謝したのであった。

1 Comment
Stephen and Gayles link
7/2/2023 07:04:19 am

Greaat read thank you

Reply



Leave a Reply.

    作者について

    えっと、作者です。お楽しみください。はい。

    過去エントリ

    June 2011
    May 2011
    March 2011
    February 2011

    カテゴリ

    All
    動物
    家族
    怪異
    生活
    町方
    神仏
    笑い話
    縁起
    農村

    RSS Feed

Powered by Create your own unique website with customizable templates.