むかし、あるところにお百姓がおった。働き者であったが、病に倒れて、もう長くもなかろうと、自分でもそう思うようになった。そこでこのお百姓、三人の息子を呼んで、こう言い残した。
「おまえらのために、言っておく。金は、田んぼに埋めてある」
そして次の朝には冷たくなっておった。
さて、家を継ぐのは長男である。長男は、父親の言葉を思い出した。そして、刈り入れの済んだ秋の田んぼに行ってみた。けれど、広い田んぼのどこに金を埋めたのか、さっぱりわからない。そこで、端から順々に鋤を使って深く、深く掘り返した。田んぼ一面をすっかり掘り返した。
けれど、どこにも金の埋まっている様子はない。そこで長男は、すっきりとあきらめた。父親は、死に際のうわ言を言ったにちがいないと、金のことはあきらめることにした。そして、金もないような家なんか継いでもしかたないと、家も田んぼも次男に残してどこかへ行ってしまった。
田んぼを残された次男は、父親の言ったことをもう一回とっくりと考えてみた。そして冬の田んぼに出てみた。兄の掘り返した田んぼには、土くれの大きなかたまりがごろごろしている。これではだめだと、次男は考えた。この大きな土のかたまりのどこかに、金が隠れているかもしれないではないか。そこで、鍬をとってきて、土くれを細かく、細かく砕き始めた。一冬かかって、すっかり細かにこなしてしまった。
けれど、どこにも金の埋まっている様子はない。そこで次男も、すっきりとあきらめた。やっぱり親父は、死に際のうわ言を言ったにちがいないと、金のことはあきらめることにした。そして、金のないような家なんか継いでもしかたにと、やっぱりどこかに行くことに決めた。
最後に残された末息子は、春の田んぼにたって親父様の言ったことをとっくり考えた。考えて、考えて、やっぱりわからなかった。
それでも、田んぼは目の前にある。兄たちが起こしてくれた田んぼがある。そこで弟は、田んぼに水を張ってみた。よく耕された水は、少し代をかくだけで、とろとろのいい泥になった。
そして、その秋には、いつもよりもずっと豊かな実りがあった。兄たちが深く耕してくれたおかげであった。
年貢を納め、要る分をのけても、まだまだたくさんの米が残った。そこで弟は、この米を売って、それほど多くはないけれど、いくらかの金を手に入れることができた。
やはり田んぼに金は埋まっていたのだと、弟は親父様に感謝したのであった。
「おまえらのために、言っておく。金は、田んぼに埋めてある」
そして次の朝には冷たくなっておった。
さて、家を継ぐのは長男である。長男は、父親の言葉を思い出した。そして、刈り入れの済んだ秋の田んぼに行ってみた。けれど、広い田んぼのどこに金を埋めたのか、さっぱりわからない。そこで、端から順々に鋤を使って深く、深く掘り返した。田んぼ一面をすっかり掘り返した。
けれど、どこにも金の埋まっている様子はない。そこで長男は、すっきりとあきらめた。父親は、死に際のうわ言を言ったにちがいないと、金のことはあきらめることにした。そして、金もないような家なんか継いでもしかたないと、家も田んぼも次男に残してどこかへ行ってしまった。
田んぼを残された次男は、父親の言ったことをもう一回とっくりと考えてみた。そして冬の田んぼに出てみた。兄の掘り返した田んぼには、土くれの大きなかたまりがごろごろしている。これではだめだと、次男は考えた。この大きな土のかたまりのどこかに、金が隠れているかもしれないではないか。そこで、鍬をとってきて、土くれを細かく、細かく砕き始めた。一冬かかって、すっかり細かにこなしてしまった。
けれど、どこにも金の埋まっている様子はない。そこで次男も、すっきりとあきらめた。やっぱり親父は、死に際のうわ言を言ったにちがいないと、金のことはあきらめることにした。そして、金のないような家なんか継いでもしかたにと、やっぱりどこかに行くことに決めた。
最後に残された末息子は、春の田んぼにたって親父様の言ったことをとっくり考えた。考えて、考えて、やっぱりわからなかった。
それでも、田んぼは目の前にある。兄たちが起こしてくれた田んぼがある。そこで弟は、田んぼに水を張ってみた。よく耕された水は、少し代をかくだけで、とろとろのいい泥になった。
そして、その秋には、いつもよりもずっと豊かな実りがあった。兄たちが深く耕してくれたおかげであった。
年貢を納め、要る分をのけても、まだまだたくさんの米が残った。そこで弟は、この米を売って、それほど多くはないけれど、いくらかの金を手に入れることができた。
やはり田んぼに金は埋まっていたのだと、弟は親父様に感謝したのであった。